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組織変革をどのように起こすか?(【本】アダム・カヘン「未来を変えるためにほんとうに必要なこと」)

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「速く歩きたければ一人で歩け。遠くまで歩きたければ誰かと一緒に歩け」                    (作者不明@アフリカ)

 

理解するには時間がかかる本

この本は、社会変革のプロジェクトに長年関わってきたアダム・カヘンが、自身のプロジェクトでの学びを失敗も成功も含めて共有した本です。

 

プロジェクトでの経験を一つ一つ思い出すように記述し、そこから自分が何を学んだのかをボトムアップで記述しています。単純明快な本ではありません。例えば、アダム・カヘンは社会的共創に成功したいなら、「力」と「愛」の両方を持つ必要があると言いますが、具体的にそれは何をすることなのか明示されているわけではありません。

概念として理解した上で、自分が何をするのかは読者が個別に考えていかなければならない課題として残されています。

 

ただ、彼が言わんとしていることは非常によく判ります。

 

 

組織に本質的な変化をもたらすアプローチ

組織に本質的な変化をもたらすのは非常に難しい

 

「この組織はどうあるべきなのか?」という問いは重要ですが、同時に「組織変革をどのように行うのか?」という問いも重要です。というより、実行されない変革案はそれこそ「絵に描いた餅」で、まったく価値がありません。

 

にも関わらず、多くの変革案が実行されずに組織の本部のキャビネットの中に眠っているというのが現実だと思います。

 

なぜか?

 

僕は計画の立て方に問題があると思うのです。すなわち、実行の当事者達が立案しなかった計画など実行されるわけが無いのです。

 

本書の中で繰り返し繰り返し指摘されていますが、「システムは、そのシステムが今生み出している結果を生み出すのに最適なように設計されており」、プロジェクトの参加者が「自分たちは問題を生み出しているシステムの一部なのだ」という認識に至らない限り、変革には至りません。「自分達が問題なのだ」と思っていない人が作った計画がキャビネットから出て実行に移される可能性はありません。

 

アダム・カヘンが「U理論のUの左側」で語るのは、このプロセスの重要性です。そして、「どこか外に問題があるのでは無く、我々が問題なのだ」という本質的な認識の変化を導くのが外部のファシリテーターの役割です。

 

 

外部の者による組織の変化の支援

コンサルタントは一貫して、組織(主に企業)の競争優位性をどのように構築するか、ということを考えます。そして、その中には変化する環境に合わせて組織をドラスティックに変える仕事も含まれます。

 

私は、コンサルティングの仕事は、上記のようなファシリテーションを定義上含むと思っています。コンサルティングは価値のある戦略を立てることによって対価を得ていますが、当事者が本質的な認識の変化(「我々が問題なのだ」)を経ていない戦略には価値が無いからです。

 

とすると、そうした本質的な認識の変化をもたらすコンサルタントのスキルとは一体なんであるのか?それはどのように磨かれるのか?「遠くまで一緒に歩いていく」とはどういうことなのか?

 

最近はそんなことを考えています。