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競争優位の源泉は人・人・人(日経ビジネス2013.6.3)

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典型的なポーターの戦略論

 

金曜日に名古屋から帰ってきたら届いていた来週の日経ビジネス。特集は「流通新勢力」

価格は安いが面白みに欠ける大型店に消費者が飽きており、驚きの要素を組み入れた中小の小売店ががんばっているという話でした。

 

これは典型的なポーターの戦略論の事例ですね。「コストリーダーシップ」と「差別化」の話そのままだと思います。大規模化しコストメリットを最大限に享受する大手流通が居て、その競争では勝てない中小が差別化の戦略を選択している、という話。

 

話としては面白いですね。巨大なものにアイデアで立ち向かう中小、という構図は判官贔屓な私も大好きな話。

 

ただ、「差別化」は言うは易しですが、模倣が容易であることが多いんですよね。消費者の飽きも早いので継続して差別化し続けるのはかなり大変。

 

TTP(Tettei Tekini Pakuru:徹底的にパクる)というらしいですが、ちょっとしたアイデアは即競合に模倣されてしまうので、あまり有効な競争優位になりません。

 

  

アイデアの賞味期限は短いと割り切る

 

世の中には極めて強固な差別化戦略を取る企業もあるのですが、大半の事例は今回の特集に出ているような「ちょっとした工夫」で差別化を試みるのが精一杯だと思います。(例えば、ユニークなレトルトカレーを300種類も集めて本棚のように陳列している「カレーなる本棚」、等)

 

この手のアイデアは面白いんですが模倣される可能性が極めて高く、賞味期限が短い。とは言え、そんな強固な差別化戦略がそう簡単に思いつくわけもない。

 

であれば、最初からアイデアはパクられるものだという前提に立ってしまうのも手だと思います。どんなに面白いアイデアを思いついたとしても、それを競争優位の源泉だ、とは思わない。

 

その代わり、そのアイデアを支える体制に競争優位の源泉を置くのだという確固とした決意を持つ。

 

 

やっぱり人では?

 

競争優位の源泉となる体制要素はいろいろあると思いますが、僕はやっぱり「」が果たす役割が非常に大きいと思います。

  • アイデアが競合に模倣される前に、次々と新しいものを出す
  • アイデアに接客を掛け合わせ、人のつながり要素で顧客をロックインする
  • 仕入れを「コネ」化するなどバリューチェーンに人間関係のウェットな要素を入れ込む

などなど。

 

アイデアが模倣されやすいものだったとしても、「人」の要素で高い参入障壁を築くことは可能なんだろうと思います。この場合、ビジネスを行う組織はその構成員全員が競争優位の源泉になりうる可能性があります。

 

人の模倣は極めて困難です。

 

マニュアルや研修で、ある程度の標準化を図ることは出来ますが、それでもやっぱり優れた人の真似をするのは難しい。人こそ究極のアナログ要素ですね。

 

それから、こういう組織の方が働いている人はやりがいがあると思います。自分はシステムの一部であり、システムに問題があるということはすなわち自分に問題があるということなのだと責任を引き受けられる方が、そうで無いよりも圧倒的に楽しい。

 

組織は競争優位を築けるし、従業員の幸福度も高まる。

人と組織のデザインを考えることって、やっぱりとても重要で楽しい仕事だと思いますね。