知恵の樹

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戦略立案とゲーミフィケーション(ジェイン・マクゴニガル「幸せな未来は「ゲーム」が作る」)

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現実はなぜゲームのように面白くないのか?

 

ファミコンが出て30年なんだそうです。

 

私の世代はゲームと共に育った第一世代。ちょうど小学校低学年の時にファミコンが出ました。最初のファミコンのA・Bボタンは四角かったのを覚えています。

 

それまでは学校が終わったら野原を駆け小川でカニやザリガニを取る毎日だったんですが、ファミコンが出てから生活が一変しました。とにかく一日中テレビの前でゲームをしていた記憶しかありません。

 

私があまりにも中毒的にテレビゲームをするので、最後は親がテレビの電源コードをハサミで切って隠してしまったのを覚えています。(ちなみに、それでもどうしてもゲームがやりたかったので、切れたコードを無理やりコンセントに突っ込んで、誤ってむき出しのコードを素手で触ってしまい、人生初の「感電」をしたことも覚えています)

 

ゲームはなぜあれほどまでに楽しいのか?逆に言うと、現実はなぜゲームのように面白くないのか?

 

面白い着想ですね。

 

子供の頃ゲームに投入した膨大な時間を悔いる必要はない。その経験を社会変革プロジェクトに生かすことを考える。ゲームの要素を生かして世の中を変えようという仕事をするのは私の世代の宿命のようなもの。作者はそう主張しています。

 

 

「ゆでガエル」はどうすれば治るのか?

 

先日、ある事業会社の方と話をしていて「うちの会社の人はどうすれば自社が危機的な状況にあるということを理解するんでしょうか?」と質問されました。

 

将来起こりうるリスクシナリオの検討をしていて、背筋が寒くなったそうです。会社の人たちはなんとなく「このままでは将来まずいのかも」と思っているものの、直近で赤字を垂れ流しているわけではないので危機感がない。しかし、シナリオを組むと近い将来にかなり高い確実で事業が傾くことが見えている。

 

私は、この問いに対する有効な答えの一つは「自分が競合だったら、自分は自社をどのように潰すか?」を考えて議論することだと思っています。競合の視点に立つことで、自社の脇の甘さがかなり明確に見えてくる。

 

会社がゆでガエルになる理由は、視点が窯の中しかないことにあります。窯の外に視点を移せば、その窯が下から火であぶられているという全体像が見え、将来何が起こるのかが理解できます。

 

要するにゆでガエル現象って単純な視点の問題だと思うんです。俯瞰して見たり、クローズアップして見たり、立場を変えて見たり。複眼視点で見るかどうかで物事はだいぶ見え方が変わります。プレゼンの練習をするときにビデオを撮って見返す、とか、商品開発をするときに顧客になりきる(=顧客が憑依する)ことで商品を見てみるとか、こういうのも視点を変える取り組みだと思います。

 

とは言っても、自分ひとりで複数の視点を持つことはなかなか難しい。こういう時に使える枠組みがゲーミフィケーションなんではないかと思います。ちょっと前に製造業の経営ゲームをやったことがあります。4~5人で行うテーブルゲームなんですが、プレーヤーが経営者となって、製品開発をして製造設備の投資をして、プロモーションをして販売をする。ゲームの中で強制的に経営者の視点を持つことで、社員をやっている限りは絶対に見えないものが見えてきました。

 

このゲームは経営と経理の一般的な知識を獲得することが目的でしたが、もっと個別の企業の事情に合わせたゲームをカスタマイズして作ったらどうか。例えば、「自社を潰すシミュレーションゲーム」 自分が競合だったらどこを攻めるか。何年くらいで自社を潰すことが出来るか。まずはその視点で自社を眺めてみる。そして立場を変えて、そういう競合の攻勢をどのようにしのぐかを考える。さらに、逆に競合の先手を取って攻撃を仕掛けることはできないのか?を考える。

 

会社からコアチームを選んで、そうしたシミュレーションを繰り返し、シミュレーションからの気づきを繰り返し繰り返し議論していく。その結果として、全員が腹落ちした戦略を集合知として作っていく。そういう取り組みを社内で行ってみたらどうか。

 

そういう取り組みにゲームが果たせる要素は大きいと思います。「背筋が凍る」経験は現実のビジネスの環境で行うべきではありません。気づいた時には手遅れで、多くの社員が路頭に迷う状況はどうしても避けたい。そうであるならば、ゲームの世界で「背筋を凍らせる」ことをするべきです。

 

ゲーミフィケーションの要素をワークショップに取り入れて、マネジメントの本質的な認識変革を促すコンサルティングサービスを提供できないか。最近そんなことを考えたりしています。